共通教育主管からのメッセージ
共通教育履修学生へ
はじめに
共通教育主管 高橋 俊
共通教育科目とは,その名の通り,全学部共通で受講する科目です。大学によっては一般教養科目などとも呼ばれ,ほとんどの大学に設置されているものです。
履修案内やシラバス(授業計画が書かれたもの)を読んで,みなさんの多くは,こう感じたのではないでしょうか。「すでに勉強したいことは決まっているのに,なぜ興味のない科目を取らなくてはならないのか?」
実は私も,大学に入った時に,そう思いました。私は文系でしたので,理系科目を取らなければならないのが無駄に感じられました。そんなものを学ぶより,早く専門の勉強をしたいと,そればかり考えていた記憶があります。
しかし,そうやって嫌々取った生物の授業が,たいへん面白かったのを覚えています。教科書の内容をなぞるだけの無味乾燥な授業ではなく,教員が自身の経験を交えて「生物の不思議」を面白く語るその授業は,根っからの文系であった私の頭の中を広げてくれました。
しっかりとした「専門分野」や「専攻」を持つことはもちろん重要ですが,それが他分野との関係の中でどういう位置づけにあるのか,というパースペクティブを持つことも,研究においては重要になってきます。たとえば私の専門分野は中国文化ですが,中国文化と一口で言っても,文学や歴史はもちろん,経済,法律,さらには防災や環境など,多くの分野とつながっています。もちろん,これらの分野をすべて勉強することは不可能でしょう(私もできていません…)。しかし,自分の専門をいったん離れて,違う分野から眺めてみると,思わぬ発見があるものです。私も理系の方々の勉強会や研究会に参加させていただくと,その考え方から大きな刺激を受けます。
これからの社会では,多様な人々と共生していくことが,必須となります。その場合,自分とはまったく違った思考を持つ人々とも,一緒に働き,生活しなければなりません。いうまでもなく,「文系人」と「理系人」が別々に暮らしている,などということはありません。みんなが一体になって,社会を維持しているのです。そうした中,狭い専門に閉じこもるのではなく,幅広い考え方を持つことは,欠かすことのできない要素になります。
みなさんも,共通教育ではぜひ,積極的に「他分野」の授業を聞いてみてください。高校までは,受験科目の関係で,文系が理系の,理系が文系の授業を取ることは,難しかったと思います。でも大学は違います。「試しに取ってみる」ということが,いくらでも可能です(単位が取れるかどうかは,「頑張り」次第ですが…)。
思い切って,今まで「食わず嫌いだった」科目を取ってみる。それこそが,高校と大学を分ける大きな違いの一つだと,私は考えています。