平成17年度 高知大学大学院修了式告辞
本日大学院を修了され、学位を授与された諸君に大きな期待を込めてお祝いを申し上げます。
諸君は、研究という頭脳作業をとおして、問題を発見し、その解決のための企画を立案し、実験を行い、得られた結果に今日的意義の視点から考察を加え、これらをまとめて世に問うというプロセスが、極めて日常的に行われている現実を大学院生として学ばれたと思います。そして今や諸君は、指導者の支援を受けることなく、自らがこの頭脳作業を遂行できるばかりでなく、後輩の研究をも指導できるだけの実力、基礎的能力が備わったことを認められたのであります。
21世紀、すなわち諸君の時代は、知の時代といわれております。
知の時代とは、正に頭脳作業の時代ということであります。わが国が世界のレベルで評価され、地球規模での人類発展に貢献する日本の知の創造と発展は、諸君の活躍なくしてはあり得ない、そのような時代の入り口に、いま諸君は立っているのです。
従来、多くの優れた知的成果は、Curiosity driven research、すなわち好奇心から始まる研究に基づいていると言われます。目の前の事柄や現象に対して、何故だろう、不思議だ、おもしろいといった好奇心が、諸君の心の中に呼び起こされることが、頭脳作業には最も重要であります。諸君の進む道が、どの方向であろうとも、この素朴な好奇心を持ち続ける事が肝要であります。いつまでも少年少女のみずみずしい心と鋭い感性を持ち続けてください。
今一つは、あなた方の仕事が独断にならないためにも、また、社会に正しく還元されるためにも、他人の評価を積極的に受け入れる姿勢を保つことを忘れないで下さい。
高等教育の中でも最もエリートたる教育を受けた人達が、この人間的な姿勢を忘れているがために、社会を乱した事例は、近年、枚挙に暇がない程であることは、皆さん十分承知しておられるでありましょう。
他人の評価を積極的に受入れる姿勢のもとに、あなた方の時代である21世紀を、日本の知の時代を、諸君自らがしっかり支えてくださることを強く期待して、学長告辞と致します。
ご卒業おめでとう。
平成18年3月23日
国立大学法人 高知大学 学長 相良 祐輔