平成19年度 高知大学大学院修了式告辞
本日大学院を修了され、学位を授与された諸君に、大きな期待を込めてお祝いを申し上げます。
諸君は研究という頭脳作業をとおして、課題を発見し、問題解決のための企画を立案し、実験を行い、得られた結果に今日的意義の視点からの考察を加え、これらをまとめて世に問うというプロセスが極めて日常的におこなわれている現実を、大学院生として学ばれたと思います。
そして今や諸君は、指導者の支援を受けることなく自らがこの頭脳作業を遂行できるばかりでなく、後輩の研究をも指導できる基本的能力が備わったことを認められたのであります。
21世紀、すなわち諸君の時代は、智の時代といわれております。
智の時代とは、正に頭脳作業の時代ということであります。わが国が世界のレベルで評価され、地球規模での人類発展に貢献する日本の智の創造と発展は、諸君の活躍なくしてはあり得ない、そのような時代の入り口にいま諸君は立っているのです。
従来、多くの優れた知的成果は、Curiosity driven research、すなわち好奇心から始まる研究に基づいていると言われます。目の前の事柄や現象に対して、何故だろう、不思議だ、おもしろいといった好奇心が、諸君の心の中に呼び起こされることが、頭脳作業には最も重要であります。諸君の進む道がどの方向であろうとも、この素朴な好奇心を持ち続ける事が肝要であります。いつまでも少年少女のみずみずしい心と鋭い感性を持ち続けてください。
今一つは、あなた方の仕事が独断に陥らないためにも、また社会に正しく還元されるためにも、他人の評価を積極的に受け入れる姿勢を保つことを忘れないでください。
高等教育の中でも最もエリートたる教育を受けた人たちが、人間としての根本である謙虚な姿勢を忘れたがために社会を乱した事例は、近年、枚挙に暇がない程であることは、皆さんは十分承知しておられるでありましょう。
他人の評価を積極的に受け入れながら、徒に軽佻浮薄に流れず、身につけられた知識、技術で、真のエリートとしてあなた方の時代である21世紀を、日本の智の時代を、諸君自らが開き、支えてくださることを強く期待して、学長告辞とします。
ご卒業、おめでとう。
平成20年3月24日
国立大学法人 高知大学 学長 相良 祐輔