平成21年度 高知大学大学院修了式告辞
本日大学院を修了され、学位を授与された諸君に、大きな期待を込めてお祝いを申し上げます。
諸君は研究という頭脳作業をとおして、課題を発見し、問題解決のための企画を立案し、実験を行い、得られた結果に、今日的意義の視点からの考察を加え、これらをまとめて世に問うというプロセスが、実際の社会活動では、極めて目常的におこなわれている現実を、大学院生として学ばれたと思います。
そして今や諸君は、指導者の支援を受けることなく、自らがこの頭脳作業を遂行できるばかりでなく、後輩の研究をも指導できる基本的能力が備わったことを、認められたのであります。
21世紀、すなわち諸君の時代は、智の時代といわれております。
一方、諸君を迎えようとしている今日の社会的状況は、全世界が、極めて深刻な経済不況にあり、人間社会のあらゆる領域において、混迷の度を深めていると言わざるを得ません。しかし翻って、この事象を静かに観察すれば、20世紀を整理して、21世紀という新しい時代の創出への、最後のステップに立っているとも考えることができます。
今ほど、人材の求められている時はありません。これまで人類の歩んできた過程で、人々が憧れ続けていることは、真の平和を具現する市民社会を創り出す、その一事にあります。そのためには若い諸君の健全なエネルギーなくしてはあり得ないと考えます。そのような時代の入り口に諸君は立っているのです。
今一つは、あなた方の仕事が独断に陥らないためにも、また社会に正しく還元されるためにも、他人の評価を、積極的に受け入れる姿勢を保つことを忘れないでください。
高等教育の中でも、最もエリートたる教育を受けた人たちが、人間としての根本である謙虚な姿勢を忘れたがために、社会を乱した事例は、近年、枚挙に暇がない程であることは、皆さんは十分承知しておられるでありましよう。
他人の評価を積極的に受け入れながら、徒に、軽佻浮薄に流れず、身につけられた知識、技術で、真のエリートとして、あなた方の時代である21世紀を、日本の智の時代を、諸君自らが開き、支えてくださることを強く期待して、学長告辞とします。
ご卒業、おめでとう。
平成23年3月23日
国立大学法人 高知大学 学長 相良 祐輔