平成21年度 高知大学大学院入学式告辞
今日ここに、高知大学の大学院に入学された皆さんに対し、高知大学教職員を代表して、心から歓迎の意を表します。
皆さんは、これまでの学問の研鑽を踏まえ、新たな飛躍を求めて、大学院でさらに研究する道を選択されました。
この選択が正しく、意味あるものであったことを実証されるように、皆さんの挑戦が、実りある成果を結ぶことを期待しております。
大学の本来は、知的探求心を基本に置いております。すなわち、知的探求心に基づく活動であれば、それは許容され、寛容されます。しかしながら、そのことは、野放図な活動を許すという意味ではありません。
知的探求の冒すべからざる原点に、「人類のためになるか」、を常に問い続けるという姿勢が、研究者に求められているのであります。
20世紀末から生じている、ある意味での科学に対する不信感は、ときに、研究に携わる人たちの中に、この求められている姿勢を見失ったと、危惧せざるを得ないとの、社会からの評価から発生しています。
高知大学がより高度な専門性を有するジェネラリストの人材育成に力を注ぐ所以は、ここにあります。即ち、文理統合の齎す、人間としての、高い品性に裏打ちされた専門家の育成を、目指しているのであります。
今や、日本においても知識基盤社会といった言葉が、日常的に使われるようになりました。高度な専門的・先端的知識の持ち主が、社会において大きな役割を果たすことは、当然期待され、科学の役割が大きくなることへの抵抗感は、相対的に小さくなってきています。それだけに一層強く、卑しからざる品性を備えることに、心しなければならないと考えます。
皆さんは最高学府に進まれ、高知大学にとりましても貴重な人材であるだけでなく、これからの社会にとっても、大切な人材であります。それだけに、自ら探求する知識についての社会的意義を自問し続けることと同時に、社会の側からの問いかけにも、謙虚に耳を傾け、知的に受け止める心を持つことを鍛錬してください。
研究の実践的成果について、人のためになるか、人類社会にとって有用か、との問かけは当然のことなのであります。この問かけを全く無視して、知的探求心の殻に閉じこもることは、社会の側から言えば、アンフェアであります。
皆さんの選択されるそれぞれの知的領域からの、社会への応答は、様々でありましょうが、この問かけには、真正直に、応えねばなりません。実は、そのとき、応える人の全人格が問われることでもあるのです。
これからの、数年間の研鑽をつうじて、皆さんが、最高学府に学ぶ者としての高い教養に裏打ちされた、高度な専門性を身につけてくださることを、私は期待しております。
皆さんの前途に、輝かしい未来があらんことを願って、学長告辞といたします。
平成21年4月3日
国立大学法人 高知大学 学長 相良 祐輔