平成23年度 高知大学大学院入学式告辞
今日ここに、高知大学の大学院に入学された皆さんに、心から、歓迎の意を表します。
皆さんは、これまでの学問の研鑽を踏まえ、新たな飛躍を求めて、大学院でさらに研究する道を選択されました。
いつの日か、この選択が、正しく、意味あるものであったことを実証されるためにも、皆さんの挑戦が、実りある成果を結ぶことを期待しております。
大学の本来は、知的探求心を基本に置いております。従って知的探求心に基づく活動であれば、それは許容され、寛容されます。しかしながら、そのことは、野放図な活動を許すという意味ではありません。
知的探求の冒すべからざる原点として、「人類のためになるか」、という命題を常に問い続ける姿勢が、研究者には求められているのであります。
20世紀末から生じている、ある意味での科学に対する不信感は、ときに、研究に携わる人たちの中に、この求められている姿勢を見失ったと、危惧せざるを得ないとの、社会からの評価から発生しています。
高知大学大学院がより高度な専門性を有するジェネラリストとしての人材育成に力を注ぐ所以は、正にこの一点にあります。即ち、文理融合のもたらす、人間としての、高い品性に裏打ちされた専門家の育成を、目指しているのであります。
今や、至る所で知識基盤社会と言う言葉が、日常的に使われるようになりました。高度な専門的・先端的知識の持ち主が、社会において大きな役割を果たすことは、当然期待され、科学の比重が大きくなることへの抵抗感は、相対的に小さくなってきていると言えましょう。それだけに一層強く、卑しからざる品性を備えることに、心しなければならないと考えます。
皆さんは、大学院という最高学府に進まれ、本学にとりましても、期待の大きい貴重な人材であります。それだけに、自ら探求しとうとする課題についての、社会的意義を自問し続けることと同時に、社会の側からの意見や問いかけにも、謙虚に耳を傾け、知的に受け止める心を持つことを鍛錬してください。
研究の実践的成果について、人のためになるか、人類社会にとって有用か、との問かけは当然のことなのであります。この問いかけを全く無視して、自分の知的探求心の殻に閉じこもることは、社会の側から観れば、アンフェアであります。
皆さんが選択されるそれぞれの知的領域からの社会への応答は様々でありましょうが、この問いかけには、真っ正直に、応えねばなりません。実は、その時、応える人の全人格が問われることでもあるのです。
これからの、皆さんの研鑽をつうじて、皆さんの時代である21世紀の社会が期待し、求めている高い教養に裏打ちされた高度な専門性を備えた人材に成長される事を期待しております。
皆さんの前途に、皆さん自身の手で輝かしい未来を、創造されますよう願って、学長告辞と致します。
平成23年4月3日
国立大学法人 高知大学 学長 相良 祐輔