2013年を迎えて
明けましておめでとうございます。2013年が始まりましたが、今年は改革案具現化の年であります。昨年、大学改革実行プランが発表され、年末の国政選挙で政権が移行したことで、大学改革に関わる問題は、さらに厳しくなると理解しております。
一昨年末の学長選考ヒアリングの際に、「高知大学と言えば海洋」というような社会的認知とそれに値する組織設置が必須であり、その為の学部・学科改編が必要であること、その下地として文部科学省から注目されていることに、「イノベーティブマリンテクノロジー、土佐さきがけプログラム、先端医療学推進センター、土佐FBC人材創出事業など」があること、さらに、「海洋コア総合研究センター、黒潮圏総合科学専攻、農学部・理学部などの海洋に係る研究組織」があり、これらの教育・研究組織をうまく組み合わせて統合することで、健康・医薬をキーワードとする教育・研究組織、海洋を中心とした地球環境をキーワードとする教育・研究組織の立ち上げが可能で、教育・研究は重点化してチーム力による推進が必要であることなどを提案しました。
「大学改革実行プラン」は文部科学省が追い詰められている状況が深刻であることを示しております。国立大学にとって文部科学省は最大・最強の与党であり、今こそ文部科学省が戦うための武器を提供する時が来ております。それが「大学改革実行プラン」に対して、各大学が提案する内容であります。高知大学の役割は、「大学のスリム化」、「組織改革」、「教育の質・方策の改革」、「地域再生の核としてのCOC機能充実」の4つであると考えております。このことで、大学の個性化、社会的ニーズに対応できる大学への変貌、大学統廃合への対応力を獲得し、学生の自律学修、地域との協働による教育・研究・産業発展、グローカル人材の育成などを可能とし、高知県と高知大学の発展推進を可能とすると考えております。
わが国の中枢を担っている一部のグループにとって、「高知県はなくても良い地域であるどころか、なくなった方が効率的でより良い社会の再構築が可能である」という考えが現実化しつつあるようです。それは、高知県だけではなく、わが国の同じような地域も消滅させることを意味しております。田舎と豊かな自然の中で育ち、生活する人々がわが国から消えるということです。多様性を否定し、モノクロ社会を作ることが効率的で、日本再生の近道と考えているグループがあるということです。そのことで危惧されることは、都会しか知らない国民と効率主義の蔓延によって、共感も協働も相互扶助もない、ひたすら競争力だけを高めることが国是となる日本国に変貌することです。
わが国の高等教育と地域を守るためには、高知大学をはじめとする地方の国立大学が社会的に高く評価される大学に変貌することが必須であります。2013年はそのラストチャンスであり、絶好のチャンスでもあります。高知大学が「何をどうするか」ということは、これまでの議論の中でも明白となっていると考えます。協働社会学と山林から海底にいたる海洋の総合的教育・研究組織を確立すること、教育の質改善と他大学が真似したくなるような総合的教養教育を確立して、優れた教員、医療者、そして社会で活躍する卒業生を輩出することであり、その教育研究機能を全学的、全県的組織力で構築することであり、「国民参画型教育システム」がその中核になるはずであります。
昨年は、国家公務員の給与と退職金の削減が決定され、国立大学法人もこれに合わせることが求められました。教職員の皆さんにとっては大変な衝撃であったと理解しております。少しでも緩和したいと考えておりますが、ご承知の通り教育改善・充実にかかる財源も十分ではありません。余裕が生じた場合には、高知大学発展のための優先順位を熟議して使用したいと考えておりますので、ご理解下さい。
高知大学は現在在籍している学生、教職員だけのものではありません。既に卒業あるいは退職されたOBの皆さん、これから入学してくるあるいは就職する教職員そして高知県民の宝であります。全ての教職員の皆さんには、部局の利害は二の次にして、陶冶学舎、高知県師範学校以来、約140年にわたる伝統に恥じない、地域と共に発展してきた高知大学の存続・発展のために、一致団結して協力して頂きたい。大学が生き残れなければ、部局も消滅することは自明の理であります。学部などのミッション再定義は重要な意味を持っております。文部科学省の反応を見て修正するのではなく、文部科学省の上を行くミッション再定義を提案するべきです。時間的余裕はありませんので「巧遅拙速」の精神でお願いします。
今月から「THEこうちユニバーシティCLUB」の放送が開始されますが、「共に進む!」を今年のキャッチコピーにして「4つのC」に加えたいと考えております。学生を中心にして、同窓会、保護者・後援会、教職員、OB等が団結力の強いチームを形成し、高知大学のサポーター、そして地域とともに発展するために、2013年が高知大学にとって歴史的な年にするように共に進みましょう。
2013年1月吉日
高知大学 学長 脇口 宏