高知大学へ入学を許可された皆さん、入学おめでとうございます。在校生、教職員を代表してお祝いと歓迎の言葉を贈ります。

　保護者の皆様方、おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。

　また、ご多忙の中、ご臨席賜りましたご来賓、関係者の皆様、有り難うございます。高知大学を代表して、お礼申し上げます。

　皆さんは、先ほどの入学許可をもって、全員が高知大学の仲間になりました。全員が私の、つまり脇口組の一年生になったのであります。脇口組のミッションは、「学生と社会に対して責任をとれる教育の実践」であり、学生の利益を優先し、責任をもって皆さんを社会に送り出すことであります。そして、総ての教職員が、皆さんの親代わりであり、教師であり、そして仲間であります。これからは、どんなことでも、遠慮しないで、気軽に教職員を頼ることを、この場で約束して下さい。

　 諸君は、熾烈な受験生活を乗り越え、高知大学という難関を突破され、晴れて、今日という日を迎えられました。これまで積み重ねてきた、諸君の努力に対して、心から敬意を表します。同時に、諸君の今日があることは、諸君自身の努力だけでなく、これまで諸君を育て、守り、そして支え続けてこられた保護者の皆様、ならびに恩師、友人など、多くの方々のご支援の賜であることを、深く胸に刻み、感謝の気持ちを忘れてはなりません。

　 さて、大学に入学したということで、ストレートに卒業できるとは限りません。これからが学修の本番であります。受験勉強とは異質の、大学生に求められる学びが出来ないと進級も卒業もできないことになります。大学の学びを一言で言えば、一つの正解が用意されている問題を効率よく解くという、極めて単純な勉強ではなく、解答が複数あったり、場合によっては解答が用意されていない命題の最善解を探す学びであり、自ら課題を発見して、それを解決するために必要な知識、能力、そして方策を、自律的学修で身につけ、辿り着いた解答が正しいと考える根拠を示し、周囲に理解させる能力を修得することであります。日頃から本当にそれでよいのか、何故だろう、ということを自問自答し、議論を深めることが大切です。そのことによって、諸君は学校ではなく大学での学びを修得し、諸君が生徒から学生に変身出来るのであります。

　大学には教養教育と専門教育がありますが、専門領域の学びを深めるためには、富士の裾野のように広く、分厚い基礎学力と教養を身につけることが必要です。つまり、専門を学ぶには、専門外の豊富な知識も必要であるということです。自分が何を如何にして学ぶべきか、何を為すべきかということを探求して頂きたい。そのようにして身につけた豊かな教養と基礎知識が、専門領域の学問と統合されることで、諸君を二十一世紀が求めている人材に、成長させるのであり、社会に出で役に立たない学びはないということを、今この場で記憶に残して頂きたい。

　高知大学は、国民の税金で成り立っている大学であります。諸君は、莫大な国税の支援によって、教育を受ける資格があると認められ、その権利を手にしております。それは、エリート候補生だけに許される特権であります。高知大学で学ぶことで、高いプライドと厳しい規範意識を身につけ、サーヴァント・リーダーとして、如何に学び、如何にしてその成果を社会に還元するか、ということを考え、リーダーの資格ともいうべきノーブレス・オブリージュの精神を、身につけて下さることを期待しております。

　地域協働学部ならびに教育学部幼児教育コースの新入生諸君、諸君は栄えある第一期生であります。先駆者であり、まさにチャレンジャーであります。教員や地域の皆さんの支援があるとはいえ、先駆者には先駆者だけが経験する苦労と大きな楽しみが待っています。意欲とあらゆることに楽しみを見いだす精神があれば、何事もやり遂げることが出来るものです。チャレンジャーという点では、新たに大学生活という未知の領域に足を踏み入れた全ての新入生諸君がチャレンジャーであります。大学生活を楽しんで下さい。

　最後に、「少年老い易く学成り難し、一寸の光陰軽んず可からず」で始まる漢詩がありますが、四年あるいは六年間という時の流れは、想像以上に速いものであります。時間を大切にして欲しいという願いを込めて、諸君に次の言葉を贈り、学長告辞とします。

　 「水は自然の恵みにして、時は宇宙の恵みなり。それ水を粗略にするものは飢え、時を軽んじるものは迷う。」

　迷うという言葉には道が分からなくなってうろうろするという意味と、ものごとがもつれ絡んで乱れ、どうにもならなくなる、という意味があります。徒に時を過ごしていては、何も解決できない、ということであります。私たちは常に制約ある時間の中で行動しなければなりません。

　 「水を粗略にするものは飢え、時を軽んじるものは迷う。」

　諸君、時間を大切にして学びたまえ、悩みたまえ。焦るなかれ、驕るなかれ、失望するなかれ、そして負けるなかれ。

　入学おめでとう。

平成27年4月3日
高知大学
学長　脇口　宏