大学紹介

平成28年度 高知大学入学式告辞


 高知大学へ入学を許可された皆さん、ご入学おめでとうございます。在校生、教職員を代表してお祝いと歓迎の言葉を贈ります。
 保護者の皆様方、おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。
 また、ご多忙の中、ご臨席賜りましたご来賓、関係者の皆様、有り難うございます。高知大学を代表して、お礼申し上げます。
 先ほどの入学許可をもって、皆さん全員が私、脇口ゼミの一年生になったのであります。全員が仲間になったということです。これからは、総ての教職員が、皆さんの親代わり、教師、そして仲間として、皆さんの学びを支援します。どんな些細なことでも、困ったときには遠慮しないで、教職員に相談することを、この場で約束して下さい。よろしいですね。
 諸君は、熾烈な受験生活を乗り越えて、高知大学という難関を突破し、晴れて、今日という日を迎えました。これまでの諸君の努力に対して、心から敬意を表します。同時に、諸君の今日があることは、これまで諸君を育て、守り、支え続けて下さった、保護者の皆様、そして恩師、友人など、多くの方々のご支援の賜であることを、胸に刻み、感謝し、その恩に報いる気持ちを忘れてはなりません。
 このたびの選挙権年齢の引き下げにより、諸君は社会の一員として責任ある立場になったことを、認識してください。有権者になるということは、選挙を通じて政治の過程に参加する権利を持つということです。権利を持つ以上、義務も生じます。諸君には、自分の意思で、政治に参加していくという義務も生じたのです。本学の県外出身者の多くは、住民票の異動手続を行っていないため、投票という権利と義務を履行できないでいます。諸君は、今後の日本の将来を決める有権者の一人ですから、その意味を十分理解し、今夏に実施が見込まれる参議院選挙から、積極的に選挙に参加して下さることを切に願っております。
 諸君が入学した高知大学は、地域に根ざし、地域と共に発展することで、二十一世紀が求める国立大学に進化する、という強い意志と理念をもって、改革を進めております。昨年は我が国初の「地域協働学部」をスタートさせ、今年は人文社会科学部と農林海洋科学部という野心的かつ挑戦的な新学部の第1期生を迎えることが出来ました。高知大学は、他大学にはない、特色あるとても優れた教育を実践しています。真剣に学ぶ意欲さえあれば、どの大学にも負けない、いや、それ以上に優れた能力を修得できるはずです。人生で最も大切な4年ないし6年間を有意義な時間にして、この高知大学という学び舎で、自分自身を大きく成長させていただきたい。それが本学の教職員全員の願いであります。
 さて、大学で最先端の専門的知識を学ぶことは、とても大切なことですが、最先端の知識はすぐに過去のものとなる運命にあります。修得した能力を社会に還元することが高等教育を受けたものの責務でありますが、専門的知識を学んだだけでは、社会で活躍することは出来ません。
 大学卒業後に、社会で活躍する上で、重要な能力は、広い視野とピンポイントで解析できる鳥瞰力、物事の本質を見抜く洞察力、文系と理系などの分野横断的な発想を基に、チームを構成して課題を解決しようとする行動力、自律的かつ持続的に学び、自分の考えを説得力のある言葉を使って説明し、学んだことを社会に還元する意欲などで、これらは、普遍的に求められる能力であります。
 そのような能力を身につけるには、哲学や歴史を含む教養を修得するとともに、日本語力を高めることが必須であり、座学、議論、そしてサービスラーニングなどによる社会との交流、留学などによる異文化体験、そして失敗体験などが必要であります。
 昨年、国立大学の文系学部不要論が新聞報道等で大きく取り上げられましたが、自然科学から哲学が失われ、科学が技術にシフトしている現在、人の内面を磨き上げ、社会で活躍し、生き抜く智恵と能力を修得させる学問は教養教育であり、人文社会科学は、まさにその中核に位置しております。人文社会科学は、どのような職業にあっても、欠かすことができない学問であり、文系、理系を問わず、人文社会科学の視点に基づく幅広い教養が諸君を大きく成長させてくれるはずです。
 その意味でも、理系の諸君は人文社会科学系の、文系の諸君は理系の教養科目を意識して選択し、出来るだけ深く学んで下さい。文系と理系を統合した発想力と知力を活用して、課題を発見し、解決する能力こそが、21世紀の持続可能社会を作り上げる能力であります。
 大学では、自分の力で情報収集と分析・評価を繰り返しながら学ぶという、自律的、能動的学修が求められます。常に疑問を持ち、仲間と議論を深めてください。そのことによって、学びの場が、これまでの学校から大学、さらには実社会へと広がり、諸君が生徒から学生、そして、社会人に変身出来るのであります。議論を深めることで、自分が何者であるか、自分が何を学ぶべきか、何をなすべきか、そして相手が何を考えているかを知り、自分と相手との違いを肌で感じ、共感することが出来ます。自分と仲間との共通点と相違点を知り、それらの意味をよく考えて頂きたい。
 最後に、「少年老い易く学成り難し、一寸の光陰軽んず可からず」で始まる漢詩がありますが、その後半は、いくら若い頃の夢と情熱を持ち続けているつもりでも、気がつけば晩秋の梧桐の枯れ葉のように、人生の終わりが近づいている、という内容です。時の流れは、実に無情であります。時間を大切にして欲しいという願いを込めて、諸君に次の言葉を贈り、学長告辞とします。
 「水は自然の恵みにして、時は宇宙の恵みなり。それ水を粗略にするものは飢え、時を軽んじるものは迷う。」
 自然や宇宙という人智を超えた存在からの贈り物を大切にしなければ、人類の繁栄や持続可能社会は実現できないということであります。
 繰り返します。
 「水は自然の恵みにして、時は宇宙の恵みなり。それ水を粗略にするものは飢え、時を軽んじるものは迷う。」
 諸君、時間を大切にして、学び給え、遊び給え、そして、焦る勿れ、腐る勿れ、決して諦める勿れ。
 入学おめでとう。

平成28年4月3日
高知大学
学長 脇口 宏

 

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