平成29年度 高知大学入学式告辞
高知大学へ入学を許可された皆さん、ご入学おめでとうございます。在学生、教職員を代表してお祝いと歓迎の言葉を贈ります。
保護者の皆様方、おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。
また、ご多用の中、ご臨席賜りましたご来賓、関係者の皆様、有り難うございます。高知大学を代表して、お礼申し上げます。
先ほどの入学許可をもって、皆さん全員が私、脇口ゼミの一年生になりました。全員が高知大学という学び舎における仲間やきょうだいになったということです。脇口ゼミでは、「学生と社会に責任をとる教育の実践と学生を自立した社会人、リーダー候補生として社会に送り出す」ことを心がけております。総ての教職員が、皆さんの親、教師、そして仲間として、皆さんの学びを支援します。これからは、どんな些細なことでも、困ったときには遠慮しないで、教職員に相談することを、この場で約束して下さい。よろしいですね。
諸君が入学した高知大学は、地域に根ざし、地域と共に発展することで、二十一世紀を切り拓く国立大学に進化する、という強い意志と理念をもって、教育研究を実践しております。二年前の我が国初の「地域協働学部」のスタートに始まり、本年四月の理工学部によって全学教育組織改革が一段落し、大学改革では全国のトップを走り、改革の成果も順調に出ております。「地域協働による教育」は高等教育に革命的な教育改革を提唱したもので、多くの国立大学が続々と地域協働学部の後に続いていることも、本学の改革が優れていることを証明しています。また、昨年の世界大学ランキングで、本学は601~800位にランクされました。国内では14位グループで、私立大学では慶応大学、早稲田大学など、国立大学では、金沢大学、神戸大学、岡山大学、熊本大学、長崎大学等が入っています。特に、高知大学の研究力は、とても高く評価され、論文引用数は国内7位で、高知大学より上位にある旧帝国大学は、東京大学、京都大学、東北大学の3校だけであります。良い大学教育は優れた研究に基づくものであり、諸君は、凄い教育研究を実践する高知大学に入学したことを誇りにして学んで下さい。
大学で最先端の専門的知識を学ぶことは、とても大切なことですが、最先端の知識はすぐに過去の知識となる運命にあります。専門的知識を学んだだけでは、社会で活躍することは出来ません。重要なことは、「何を学んだか」ではなく、「どのように学んだか」そして「学びの過程でどのような能力を身につけたか」であります。専門的知識を「何処で、どのように活かすのか」「活かすために必要な技術・能力は何か」ということを考えながら学んで下さい。
大学教育の目的の一つに批判的精神を身につけることがあります。批判的精神とは現状の中に課題を発見する能力と言い換えることが出来ますが、課題を発見した時に解決する行動が伴わなければ意味がありません。課題を解決するには、豊富な知識と優れた実行力が求められます。多くの場合、チームを構築して協働することが必要です。協働とは、協力しながら相互に働きかけることです。チームのメンバー一人一人が自律的、主体的であることが求められます。今日からは、安易に教えを求めるのではなく、自律的、能動的に学びましょう。
諸君が、国税の支援を受けて学ぶ権利を得たということは、高知大学で学び修得した能力を以て、リーダー候補生として社会の発展に貢献する責務を負っているということでもあります。そして、自分や家庭だけではなく所属する組織や社会を幸福にする責務があります。そのためには、卒業後は定職を持ち自立することが必要条件となり、それに加えて、アイデンティティを確立し、自分を公正に愛し、自分に誇りを持つことが必要です。諸君には、これまで以上に自分に関心を持ち、自分を知り、自分を愛し、自分の生き方に誇りを持てる学びをして頂きたい。そして、自分自身と同じように周りの人に関心を持ち、理解し、愛し、敬意を払って下さい。
さて、これからAI全盛時代になりますが、AI全盛時代に求められる能力は、リサーチマインドと言うことが出来ます。質の高い研究は最良の課題発見・課題解決学修でもあります。研究によって、物事の本質を見抜く洞察力、課題発見・課題解決力、失敗する能力と失敗から立ち直る力、諦めない力などの普遍的に求められる能力が修得できます。AIが持てない能力は、失敗する能力、豊かな感情、イマジネーション力、洞察力、交渉力などですが、とりわけ、失敗して落ち込み,立ち直り、諦めることなく失敗を糧にして向上すること、そして想像することが重要であります。
高知大学は、他の大学にはない、「総合的教養教育」と「地域協働による教育」というとても優れた教育を全学部必修にしています。この教育も、まさに、AI全盛時代に活躍出来る能力の育成が可能な教育です。真剣に学ぶ意欲があれば、どの大学で学ぶよりも優れた学修成果をあげることができるはずです。諸君は、この素晴らしい高知大学で学ぶチャンスを手にしたのです。この絶好のチャンスを生かし、チャレンジ精神をもって、自分の意志で能動的、積極的に学修して下さい。
最後に、「少年老い易く学成り難し、一寸の光陰軽んず可からず」で始まる漢詩がありますが、時の流れは、実に速くかつ無情であります。時間を大切にして欲しいという願いを込めて、諸君に次の言葉を贈り、学長告辞とします。
「水は自然の恵みにして、時は宇宙の恵みなり。それ水を粗略にするものは飢え、時を軽んじるものは迷う。」
自然や宇宙という人智を超えた存在からの贈り物に敬意を払い、大切にしなければ、幸せな人生はおろか、真っ当に生きて行くことさえ難しい、ということであります。
繰り返します。
「水は自然の恵みにして、時は宇宙の恵みなり。それ水を粗略にするものは飢え、時を軽んじるものは迷う。」
諸君、時間を大切にして、学び給え、遊び給え、そして、焦る勿れ、決して諦める勿れ。
入学おめでとう。
平成29年4月3日
高知大学
学長 脇口 宏