平成29年度 高知大学卒業式告辞
卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。
保護者の皆様には、感慨もひとしおのこととご推察致します。心からお祝い申し上げます。
また、ご多忙のところ、ご列席賜りましたご来賓、関係者の皆様に対しまして、高知大学を代表して御礼申し上げます。
皆さん、皆さんが学んでこられた高知大学は凄い大学に成長しています。大学改革では全国のトップを走り、世界大学ランキングで、二年連続六〇一~八〇〇位にランクされました。国内では十三位グループで、広島大学、岡山大学、香川大学、千葉大学、金沢大学、熊本大学、慶応大学、早稲田大学などと同じグループです。中四国の他の国立大学は国内三十位グループでした。研究レベルを反映する論文引用数は国内十三位で九州大学、北海道大学、筑波大学より上位という凄さであります。「大学教育は優れた研究に基づくべきである」とは、一九三六年、ハーバード大学創立三百周年記念のジェイムス・コナント総長の式辞であります。これこそが、大学教育に求められる普遍的な理念であります。皆さんには、優れた教育を受けてきたこと、そして、高知大学卒業生であることに、大きな誇りを持って頂きたい。
国立大学で学ばれた皆さんには、社会のリーダーを目指し、皆さん自身と家族だけではなく、社会を幸せにする責務があることを忘れないで下さい。リーダーとは、現状を分析し、未来を切り拓く考えや計画を立案し、それを仲間に理解してもらい、チームで実践し、実践したことに評価を受ける人材であります。リーダーとしての資質を高め、その責務を全うするためには、これからも学び続けることが必要です。皆さんが手にされた学位記は、皆さんが、生涯学び続け、人生の目的を達成するための優れた手段と高い能力を手にしていることの証であります。自信をもって、これからの人生を歩んで頂きたい。
さて、これからAI全盛時代に入って行きます。「十年後の大学卒業生の六十五パーセントは、現在無い職業に就く」「十五年後には、私たちの仕事の半分はロボットが代行する」という予測があります。ホワイトカラーの仕事は、既にロボットに代替され始めていますが、ロボットが私たちの仕事を奪うことを恐れる必要はありません。ロボットに出来る仕事を人間がする必要はないということであり、ロボットには出来ない仕事を創る時代になるということです。そのような時代に必要な能力は、AIには持てない能力であります。例えば、イマジネーション力、自律的に学び続ける力が生み出す独創的な発想力、人の心を理解し共感する力、異なる分野の人とチームを組んで協働し交渉する力、知識や技術を応用する力、生き甲斐や生きる目的を持ち、絆を大切にする心、そして、失敗から立ち直ることが出来、その失敗から大切なことを学びとる力などであります。
なかんずく大切なのは、微妙な言い回しを理解し、美しく分かり易い文章を書く力とセレンディピティであります。AIに日本語を正確に理解させるプログラムがなく、AIには正しい文章を作ることが出来ないと言われています。セレンディピティは昨年の黒潮祭のテーマですが、「思いがけない発見をする才能」「思いがけない出会いをものにする能力」という意味で、「幸運の持ち主」と言っても良いでしょう。運も実力のうちと言いますが、私は「運は実力の賜」であると考えています。運が良いと言われる人は、運を呼び寄せる力を備えている人であり、理想と目標を持ち、理念に沿って夢を実現させようと努力している人には「幸運の女神の前髪」が見えるのです。それは、「真摯に学び続ける人」と言っても良いでしょう。学びは何時でも何処でも出来るものであり、学び続けることが、自分を磨き、運を引き寄せ、人生を楽しく生き抜く力を育んでくれます。
学ぶことは新たな感激を知り、目標を高める行為でもあります。理想や目標が高いほど、やり遂げた時の感激は大きなものとなります。皆さんには、大きな幸運を手にし、大きな感激を知るためにも、高い理想と目標を掲げて学び続けて下さることを願っております。
最後に、皆さんが、高知大学の源流とも言うべき旧制高知高等学校の誇り高き精神を受けつぎ、高知大学で学ばれたことに誇りを持ち続けて下さることを願い、生き様と感激、理想について格調高く謳っている旧制高知高等学校初代校長 江部淳夫先生の言葉を餞として贈り、学長告辞とします。
汝等壮なるかな
行け功名を論ぜず
人生唯意気に感じて闊歩するところ
壮々の大気は歓喜に満ちて
大望の芳香は塵界に匂わんとするなり
感激あれ若人よ
感激なき人生は空虚なり
汝らが前に高く高く理想を掲げよ
さすれば
道は坦々として汝らが前に拓けん
脇口クラスの諸君
羽ばたきたまえ大空へ
高き理想を掲げて
ご卒業おめでとうございます。
平成30年3月23日
高知大学
学長 脇口 宏