大学紹介

                                 2019年年頭の挨拶 

「フィールドサイエンス実習 ”田植え”」.JPG第2回高知大学フォトコンテスト 大賞「フィールドサイエンス実習“田植え”」

 

 

 みなさん、明けましておめでとうございます。

 今日は、今年の終わりに「今年は本当におめでとうだった」と言える年にしたいという思いでここに立ちました。

 今日は、これからこの1年間で目指すことと、気を付けることの2つの側面からお話ししたいと思います。

 今年は亥年で、世間では「猪突猛進で」などと言っていたりもしますが、私はどちらかというとこの言葉はあまり好きではありません。昨年は国の種々の会議で大学に対して、様々な方向性のことがある種「猪突猛進型」に押し寄せてきており、我々がそれらをどう捌いていったらいいか、その中をどう進んでいけばいいのかということを考えながら年末年始を過ごしていました。

 また、国の方ではよく「選択と集中」という言葉を使っています。選択と集中というと響きはいいですが、選択されなければ駄目ですし、集中を受け取れなければ何のメリットもありません。そのような中で高知大学はどう進むのかを考えなければなりませんが、今年は特に、「猪突猛進」と「選択と集中」に注意して動かなければいけないなと感じています。

 この写真は、第2回高知大学フォトコンテストの大賞受賞作品です。農林海洋科学部の1年生がフィールドサイエンス実習で田植えをしているシーンです。この写真の構図も良かったのですが、こうして「みんなで一度、一緒に何かをやってみよう」としているところが一番うまく現れていたので、私はこの作品を大賞に選びました。これから高知大学が何かをするときには、このように取り組まなければならないと思っているところです。

 まず、国立大学改革全体の方向性の話をします。最近の大学を取り巻く様々な事情を、みなさんにも共有していただきたいと思います。

 政府の動向としては、100年間の人生をどのように生きていくのかといったことを考える壮大な「人づくり革命基本構想」が人生100年時代構想会議から平成30年6月に出されました。その中で大学のことも触れられていて、総合的な学修が出来るようにとか、連携が出来るようにとか、リカレントをどんどんやるようにといった内容が含まれていました。

 次に、文部科学省ですが、「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」という中央教育審議会答申が平成30年11月26日付で出されました。ここでは、あらゆる世代がきちんと教育を受けることができ、また人口の減少にも対応する必要があるということが書かれています。その流れの中で、国立大学の一法人複数大学制が取り上げられています。では、高知大学はどうするのかといったときに、すぐに統合を検討するのではなくて、どうすればお互いメリットがあるのか、難局を乗り切るときにどこに力を入れるかを考えるべきで、私は、意味の無い連携や統合はしない方が良いと思っています。その他の動向としては、国立大学協会が「高等教育における国立大学の将来像」をまとめており、政府などのプレッシャーをある程度押し戻しながら、それでもある程度歩み寄りながら書かれています。国立大学協会は行政改革推進会議等の種々の会議に対して反対の意見を述べていますが、それは国立大学の機能が縛られてしまうと絶対に駄目になるという確信を持っているからです。その他では経団連が「今後のわが国の大学改革のあり方に関する提言」をまとめました。これからもっと大学と協議や相談をしたいということですが、私は「こんな人を育ててほしいという要望をもっと聞いて欲しい。」という真意があると思っています。このような報告書が、この1年間に集中して出てきています。ものすごく様々なことが変わろうとしているのは確かです。こうした中で我々はどうすべきかを考えなければならないのです。

 国立大学は中期目標期間があって、今はその第3期目です。法人化直後の第1期は、中央教育審議会も地域社会の知識・文化の中核とか全国的な高等教育の機会均等の確保を書いていますけれど、第2期になると文部科学省が、国立大学改革実行プランを主導し、各大学がどう答えてくるかを見定めるようになりました。我々の大学の改組はこの時期から始まりました。ただ、国立大学改革実行プランが出る前の第1期の終わりから、高知大学はどんな改革をする予定なのかとずっと聞かれ続けており、第2期の中期目標を作成するときに既に準備を始めていたので、高知大学は慌てることなく乗り切れましたし、その後は順次、改組が進んできているわけです。第3期は、指定国立大学法人制度が始まり、一法人複数大学制度の検討が開始されています。

 予算関係の話ですが、国立大学法人の運営費交付金の推移を見ると、平成16年は1兆2,000億円超であった予算が年々減ってきて、今は1兆1,000億円を下回ったくらいで止まっています。このところ予算は確保されているかのように説明されますが、中身をみると基盤経費と呼ばれる大学が使途を決めて使える経費が、法人化以降着々と減っています。そのかわり増えたのが、競争的資金の部分です。要するに交付金は減っていないが自由にできない仕組みに変わっているということです。

 新年度の予算ですが、先ほどの1兆円のうち1,000億円を各大学の基幹経費から引き、後は評価に応じてそれを再配分する仕組みになる予定です。

 新しい評価・配分イメージですが、配分指標としては、会計マネジメント改革、教員1人当たり外部資金獲得実績、若手研究者比率、運営費交付金等コストあたりTOP10%論文数、人事給与・施設マネジメント改革となっています。年俸制についてはかなり厳しく言われるものと思っています。

 高知大学は法人化後どのように歩んできたかというと、第1期は「地方の大学から地域の大学へ」、第2期は「地域になくてはならない大学へ」、そして第3期は「地域と協働できる大学へ」として、地域協働学部の新設や、教育は地域協働型教育に力点を置くということを実施してきています。第4期は「地域を支える大学」にならなければならないと思っています。高知県を最小単位の地域と考えていますが、少なくとも高知県において地域を支えている大学と言われるようにならないと、また、地域の真の旗頭であってもらわなければ困ると高知県民から言われる大学にならないと、高知大学の将来・未来はないと思っています。

 平成27年から29年の間で学部改組を行い、現在は大学院の改組中です。また希望創発センターの新設や次世代地域創造センターの改組があり、これらがしっかりと機能するということが必要だと思っています。その上で各学部、専攻等の強み・特色を共有・活用し、Super Regional Universityを目指しているところです。

 学長就任の際にもお話ししたように、どこかが独立して走ってもそれだけでは全体が動きません。バランスが取れて全体が良くなっていかないと、何かが突出しただけではすべてが良い方向に変わるとは私は考えていません。まずは、高知大学教職員、学生、附属の生徒さん合わせて8,000名を超える構成員1人1人が、「高知大学はSuper Regional Universityを目指し、地域を支える大学になる。」ということ共有していただきたいと思います。それが出来る大学こそが強い大学だと思いますし、Super Regional Universityという生態系を動かしていくことが可能になると思っています。

 今は、みんなで田植えを始めたところです。まだ田植えは続いています。これから育てて、収穫をして、また次を植えて、というサイクルを繰り返していくことになります。

 どうか皆さん今年1年間よろしくお願いします。

 

「Super Regional University,高知大学」生態系をうまく機能させるには、みなさん1人1人の力が必要です。

 

2019年1月吉日

高知大学 学長 櫻井 克年 

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