平成16事業年度財務諸表の概要について
平成16事業年度財務諸表の概要について
国立大学の法人化で大きな変化を伴なう分野は財務・会計面であり、従来の官庁 会計から企業会計に準拠した国立大学法人会計基準により会計処理を行うこととなりました。
高知大学においても平成16年4月より国立大学法人としてスタートし、高知大学の目標を成し遂げるための計画に沿っ て立案した予算を基に業務運営を実施したところです。その実施状況を国立大学法人法及び国立大学法人会計基準及び国立 大学法人会計基準注解並びに国立大学法人会計基準に関する実務指針に従い会計処理を行ってまいりました。
国立大学法人会計基準は、企業会計原則を原則としつつ、独立行政法人会計基準を基礎として、国立大学法人の主たる 業務内容が教育・研究であること、学生納付金や附属病院等の固有多数の収入を有すること、国立大学法人間における一定 の統一的取扱いが必要とされていることなどの特性に配慮して、必要な修正を行ったものであります。
企業会計には無い主要表として、国立大学法人等業務実施コスト計算書がありますが、これは、国立大学法人の業務運営 に関して国民の負担に帰せられる現在及び将来のコストを表示するものであり、損益計算の対象とはならない国からの無償 借り受け資産の賃料相当額などを機会費用として加える一方で、国民の直接の負担とはならない学生納付金等の自己収入を 除いて算定するものです。
また、主要表の表示に関し、国立大学法人に特徴的なものとして、損益計算書において業務費を教育・研究・診療などの 目的別に区分していることなどがあります。
以下に、その概要を記します。
○貸借対照表関係
資産の総額は、約528億2千4百万円となっております。
このうち、固定資産は約466億9千8百万円となっており、流動資産は約61億2千6百万円となっております。
負債の総額は、約234億4千4百万円で、その主なものは国の機関であった時の借金である国立大学財務・経営センタ ー債務負担金と産業投資特別会計からの長期借入金で、併せて約117億6千3百万円、寄附金として執行すべき債務額と して約10億6百万円であります。
特に国立大学財務経営センターからの債務負担金については、今後の病院収入により返済を行うものであり病院運営に おける財政圧迫の最大の要因となっております。
資本の部のうち、政府出資金が約265億4千6百万円となっており、これは、国から出資された資産額から国立大学 財務・経営センター債務負担金及び産業投資特別会計からの長期借入金の承継額を控除した額となっております。
資本剰余金の額は約6億2百万円となっておりますが、これは、主に国から承継した附属病院に係る未収入金の一部を 資本剰余金として計上し、その額から損益外減価償却累計額(損益外減価償却累計額とは、固定資産のうち、その減価に 対応すべき収益の獲得が予定されないものとして指定されたものの減価償却費見合の金額は、直接資本剰余金から減額する こととなっており、その累計額である。)を控除した額となっております。
利益剰余金の額は、約22億3千1百万円となっており、これは、後に記述いたします損益計算書上の総利益の額と なっております。
なお、法人化時に国から出資等がなされた金額は、資産として土地、建物外で約428億3千5百万円を、負債としては 国立大学財務・経営センター債務負担金及び産業投資特別会計からの借入金として、約162億8千9百万円、資本金とし ては、約265億4千6百万円となっておりました。
【貸借対照表構成図 (2005年3月31日)】
○損益計算書関係
経常費用の額は、約241億9千9百万円となっております。
内訳としましては、業務費のうち教育経費が約10億2千3百万円、研究経費が約9億8千万円、附属病院に係る診療 経費が約57億7千6百万円、附属図書館に係る教育研究支援経費が約1億5千万円、受託研究、共同研究に係る経費が 約2億9千1百万円、受託事業に係る経費が約1億1千9百万円、役員人件費が約1億1千2百万円、教員人件費が約7 6億6千7百万円、職員人件費が約68億2千8百万円、一般管理費が約8億9千3百万円、支払利息等の財務費用が約 3億6千万円となっております。
経常収益の額は、約260億6千2百万円となっております。
内訳としましては、国からの運営費交付金収益が約103億5千9百万円で、この額は、国から運営費交付金として 交付された額から、運営費交付金を財源に固定資産を取得した額を控除した額となっております。
次に授業料収益が約29億3千7百万円となっております。この額は、本来徴収すべき額(免除者分も含む)全額を 計上しております。
次に入学料収益が約4億3百万円となっております。この額も、本来徴収すべき額(免除者分も含む)全額を計上して おります。
次に検定料収益が約1億円となっております。この額は、実際に収納した額となっております。
次に施設費収益が約6千4百万円となっております。この額は、施設整備費補助金として受領した額のうち、固定資産に 投下された額を控除した額となっております。
次に附属病院収益が約103億2千8百万円となっております。この額は、附属病院で診療した額(未収分も含む) となっております。
次に受託研究及び受託事業等収益が約4億6百万円となっております。この額は、受託研究、共同研究及び受託事業とし て受け入れたもののうち、当該年度に執行された相当額が計上されております。
次に寄附金収益が約4億9千2百万円となっております。この額は、国から承継した額及び当該年度に受け入れた額の うち、当該年度に執行された相当額が計上されております。
次に資産見返負債戻入益が約7億9千万円となっております。この額は、運営費交付金及び寄附金を財源に固定資産を 購入したもの、又国から承継した物品の減価償却費見合の額が計上されております。
次に承継剰余金債務戻入益が約9百万円となっております。この額は、国から承継した承継剰余金(授業料等の返還財源及 び国の時代に起因する債務等として国から措置されたもの)のうち、当該年度に執行された額と同額が計上されております。
その他、財務収益、雑益として約1億7千4百円計上しております。この額は、受取利息、財産の貸付料及び農場で生産 されたものの売払収益等が計上されております。
臨時損失の額は、約13億7百万円となっております。又、臨時利益の額は、約16億7千5百万円となっております。 これらの額は、国から承継したものに係る収益、費用及び台風による損失並びに災害復旧費、損害保険金収益の額を 計上しております。
当期の純利益は約22億3千1百万円となっており、今期は目的積立金の取り崩し額はないため、当期の総利益も同額 の約22億3千1百万円となっております。
以下にその概要を記載します。
平成16事業年度における剰余金の発生要因について
Ⅰ.平成16年度決算における剰余金の概要
平成16年度決算における国立大学法人高知大学の剰余金について、経常利益の合計は、18億6千3百64万4千円 (経常費用241億9千9百7万4千円の7.7%)、当期総利益は、22億3千1百8万9千円(費用総額(臨時費用含む) 255億6百26万6千円の8.7%)となりました。
剰余金の主な発生要因として、会計の認識基準が国における現金主義から企業会計における発生主義に変更になったこと など会計ルールの変更に伴う移行時限りのものとして、未収授業料及び未収附属病院収入、平成15年度末における医薬品 や診療材料の在庫相当額及び国から承継された診療機器等の減価償却費相当額が考えられ、また、国立大学法人における会計 ルールによるものとして、附属病院に関する借入金元金償還額と減価償却費の差額などが考えられます。
Ⅱ.平成16年度決算における剰余金の主な要因
剰余金22億3千1百万円の要因である収益の増の主な要因について説明いたします。
なお、剰余金は、こうした収益の増を含む収益と、平成16年度における教育経費や研究経費などの費用との差引により 生じております。
1.移行時限りの剰余金の要因 【8億2千9百万円】
国立大学法人への移行時における資本金額の算定に際しては、土地・建物等の旧国有財産と財政融資資金などからの 借り入れにより取得した物品の合計額から借入金の合計額を差し引いた差額を資本金の額としております。
特殊法人などが独立行政法人化した際には、資産の総額から負債の総額を差し引いた差額を資本金の額としております が、こうした独立行政法人と比べ、国立大学法人においては資本金の算定対象を限定したため、国から承継された物品や 債権が債務より多い場合には、移行時限りの剰余金が発生することとなります。
例えば、移行時に国から承継された未収授業料等の債権や医薬品等のたな卸資産については、臨時利益として移行 時限りの剰余金の要因となります。
また、独立行政法人と共通する取り扱いですが、国から承継された物品については、国立大学法人会計基準における 会計ルールによって、その相当額について資産見返勘定を立て当該物品の減価償却に際してその相当額を戻入することに より、減価償却費を損益計算に反映させつつも、費用と収益を同額計上して利益又は損失の額に影響させない仕組みとして おります。国から承継された附属病院における診療機器等についても、同様の取り扱いとしていることにより、資産見返 勘定の戻入による収益に加え、診療機器等の使用により、減価償却費見合いの附属病院収益が獲得されることになるため、 移行後数年間はこうした資産見返勘定の戻入による収益について剰余金の要因となります。
こうした移行時限りの剰余金の発生要因毎の影響額は、以下のとおりです。
(1) 未収授業料及び未収附属病院収入・・・・・・・・・・・・・4億2千2百万円
(2) 平成15年度末における医薬品や診療材料の在庫相当額・・・1億8千4百万円
(3) 国から承継された診療機器等の減価償却費相当額・・・・・・2億2千3百万円
2.将来の収益を先取りしたことによる剰余金の要因 【8億6千2百万円】
国立大学法人の附属病院における診療機器や建物などについては、その大半を財政融資資金からの借入金により 整備しております。借入金による整備の前提として、診療収入により当該借入金の償還を行うこととしているため、借入 金の償還相当額について収益の獲得が必要となります。
借入金の償還期間が耐用年数期間より短い場合、借入金の償還には、実際の現金の支払いが伴うため、その現金を 獲得すべく収益の獲得がなされる必要があります。会計処理上、借入金の元金償還相当額の収益については、直接には見 合いの費用が立たないため、剰余金の要因となります。この場合、借入金の元金償還の終了後においては、収益の獲得が なされていないことが前提となりますので、借入金の償還と減価償却のタイムラグにより剰余金が生じているといえます。
国立大学法人においては、この借入金の償還と減価償却のタイムラグがありますが、本学の実態をみると借入金の 元金償還額が減価償却費を上回っているため、その差額について剰余金の要因となります。このことによる剰余金の影響 額は、以下のとおりです。
(4) 附属病院に関する借入金元金償還額と減価償却費の差額8億6千2百万円
3.経営努力による剰余金 【5億7千7百万円】
本学は、法人化のメリットを生かし、創意工夫することにより附属病院収入その他の業務収入を増収させ、また、一般 管理費などの経費を節減するなどの経営努力を行っております。こうした経営努力による収入の増や経費の節減等として 5億7千7百万円を生み出すことができています。
以上、収益の増の主な要因について説明いたしましたが、「(1)未収授業料及び未収附属病院収入」について,未収金のうち 明らかに回収の見込みが立たないものについて、徴収不能処理を行い費用をたてるなどの処理を行い、また、「(2)平成 15年度末における医薬品や診療材料の在庫相当額」についても期中において費用処理されたり、費用の増により剰余金 に直接には反映されていません。
Ⅲ.平成16年度決算における剰余金の今後の取り扱い
国立大学法人の平成16年度決算における剰余金は、各国立大学法人の「利益の処分に関する書類(案)」を受け、国立 大学法人法第35条において準用する独立行政法人通則法第44条第3項により、財務大臣協議が整い次第、文部科学 大臣による承認が行われ、各国立大学法人が中期計画において剰余金の使途として定めた教育研究の質の一層の向上など に充てていくことになります。
【 収 益 】
【 費 用 】
○キャッシュ・フロー計算書関係
キャッシュ・フロー計算書においては、一会計期間における資金の動きを業務活動によるキャッシュ・フロー、投資 活動によるキャッシュ・フロー及び財務活動によるキャッシュ・フローの三つに区分して表示することとなっており、 概要は、以下のとおりとなっております。
まず、業務活動によるキャッシュ・フローは、約44億6千9百万円の増となっております。業務活動による キャッシュ・フローの区分には、国立大学法人の通常の業務の実施に係る資金の状態を表すため、教育・研究の実施に よる収入、原材料、商品又はサービスの購入による支出等、投資活動及び財務活動以外の取引によるキャッシュ・フロー を記載しております。国から交付される運営費交付金については、法人がその業務を行うことを前提に、そのための財 源として交付される資金であり、損益計算書上においても法人の業務の遂行によって最終的に収益計上されるものである ので、その収入額を業務活動によるキャッシュ・フローの区分に計上しております。
次に、投資活動によるキャッシュ・フローは、約1億5千7百万円のマイナスとなっております。投資活動による キャッシュ・フローの区分には、固定資産の取得など、将来に向けた運営基盤の確立のために行われる投資活動に係る 資金の状態を表すため、国立大学法人の通常の業務活動の実施の基礎となる固定資産の取得及び売却等によるキャッシュ ・フローを記載しております。国立大学法人に対して国又は国立大学財務・経営センターから交付される施設費について は、その収入額を投資活動によるキャッシュ・フローの区分に計上しております。また、損益の算定に含まれる受取利息 は投資活動によるキャッシュ・フローの区分に計上しております。
次に、財務活動によるキャッシュ・フローは、約14億3千6百万円のマイナスとなっております。財務活動による キャッシュ・フローの区分には、借入れ・返済による収入・支出等、資金の調達及び返済によるキャッシュ・フローを 記載しております。支払利息は財務活動によるキャッシュ・フローの区分に計上しております。
その結果、当期の資金の増加額は、約28億7千5百万円となっております。
資金の期首残高は、国から承継した寄附金の残高で約10億6千4百万円を計上しており、これに、当期の資金増加額 を加算した約39億3千9百万円が当期末の資金残高となっております。
その他、財務諸表、附属明細書等の詳細は「財務諸表(第1期事業年度)」をご参照ください。